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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2022年06月08日

夢中になれない時代 

ット商品応援団日記No804毎週更新) 2022.6.8



持続化給付金詐欺が相次いでいる。経産省のキャリア官僚から始まり、組織だった詐欺まで各々異なるが、共通していることの一つが「若い世代」によるもので、個人事業主を対象とした申請者として名義貸しをした主に学生が多く、給付金詐欺の特徴の一つとなっている。特に巧妙なのが給付された100万円の内手数料20万円を除いた80万円を暗号資産への投資をするという誘い文句あったと報道されている。
実は令和の時代はどんな時代なのかを鮮明にするために未来塾で「昭和」の時代の価値観の比較をしてきた。その中で「新しい「生き方」が生まれた」価値観の一つとしてとして次のように書いたことがあった。

『もう一つの人生が『FIRE』と呼ばれるグループである。FIREというのは文字通りFinancial Independence『経済的自立』とRetire Early『早期退職』の造語である。株高を背景に『FIRE』は裾野を広げており、企業・仕事に縛られることなく、自由なライフスタイルを楽しむ、そんな生き方である。若い世代の価値観について貯蓄好きな合理主義者であるとブログにも書いてきたが、コロナ禍によって生まれた進化系で、その代表的な世代がミレニアム世代である。ミレニアル世代は、1980年から1995年の間に生まれた世代と定義されている。現在25歳から40歳を迎える世代で、以前日経新聞が「under30」と呼び、草食世代と揶揄された世代のことである。ちなみに消費において注目されているZET世代はミレニアム世代の下の世代である』

実はこのコロナ禍において静かに進行していたものの一つに暗号資産の法整備があった。銀行に預けても利息がない時代が長く続き誰もが金融に関する価値観が変わり始めていた。当時は仮想通貨と呼んでいた通貨は暗号資産へと変わった。今や7000種類以上の通貨が存在している。その通貨の特徴は少額から購入できる。こうしたことから初心者でも始めやすく、分散投資効果を高めるのに格好な通貨へと生まれ変わった。
暗号資産投資は、1,000円ほどの少額から購入できます。始める際の敷居が低く毎月のお小遣いの範囲で投資も可能なので、気負わず資産運用を始めることができ若い世代に急速に進行してきた。2021年2月、アメリカの電気自動車メーカー・テスラが、暗号資産・ビットコインを15億ドル(約1,600億円)購入。さらに、近い将来ビットコインをテスラ車購入の決済手段とする考えを明らかにして話題を集めた。つまり、投機ではなく「投資」へと大きな価値観変化が生まれていたということだ。

暗号資産運用のセミナーは至る所で行われ、資産形成の一つの方法となったが、今回の詐欺事件の特徴としてこうした投資セミナー開催の名を借りた給付金申請への勧誘を行っていたことは偶然ではない。年金をもらえない世代とも言われる若い世代にとって新たな資産形成は重要なものになったとしても不思議ではない。その発想の先にFIREがある。暗号資産の運用は「個人事業」という言葉に疑いも持たずに進んでしまう。
今回の詐欺事件の勧誘に使われたものの一つがSNSである。家族で詐欺行為をしたグループもいたが、勧誘を組織的に行ったグループの多くはSNSで、人から人へと勧誘の輪が広げたるという訳である。
ここ2回ほど「昭和」をテーマにブログを描いてきたが、令和と昭和の違い、価値観の違いはなんであるかと言えば「夢」が持てる時代であるかどうかとなる。夢中になれたかどうかと言っても構わない。少し前の未来塾で昭和の町工場、べンチャー企業であった自動車のホンダには「夢」が脈々と継承されている。ある意味「生き方」「生き様」の継承で、お金のない時代にあって本田宗一郎はまだ創業8年バイクの販売で急成長している時のインタビューで次のように答えていた。
「乏しい金を有効に活かすためには、まず何より、時を稼ぐこと」「うちのセールスマンは、給料を出さないお客さんなんです。このセールスマンを育てるには、品物を育てなければならぬということです」「エンジン屋はエンジンばかり、オートバイ屋だからおまえはオートバイしかできないというような考え方が、そもそも間違っているんだ」と。(「東洋経済新報」1954年11月13日号より)
社員を愛し、社員の可能性考え、一緒に油まみれになってオートバイをつくるとは夢の共有であったということである。まさに本田宗一郎らしい発想である。この時代問われているのは若い世代の生き方ではなく、所属する組織のリーダーに夢があるかである。持続化給付金詐欺事件は氷山の一角で、海面下には夢が持てない、夢中になれない時代あが広がっているっということであろう。
持続化給付金は約5.5兆円支給されている。少なくとも運転資金で困っていた個人事業主を助けることができた。そして、その多くは夢を追いかけることができたということである。新型コロナウイルスは収束に向かいつつあり、事業の再生へと向かわなければならない時期である。前回のブログで既に悪性インフレが始まっていると描いた。家計調査の4月度の数字が公開されたが、勤労世帯の収入は前年同月比実質 3.5%の減少。消費支出も前年同月比 実質 1.7%の減少 とのこと。 前回のブログで「悪性インフレ始まる」と書いたが、4月の家計調査の数字がそれをよく表している。日銀の黒田東彦総裁は、6日の講演で「家計の値上げ許容度も高まってきている」という見解を示したが生活者は許容などしていない。それどころか真逆で事業者も生活者も耐えているのが現実である。悪性インフレ解決には賃上げしかないが、その前にやるべきは「夢」を語り合うことだ。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 12:57Comments(0)新市場創造