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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2016年03月25日

再先送りされる消費税

ヒット商品応援団日記No639(毎週更新) 2016.3.25.

来年4月に予定されている消費増税がまた先送りされ、7月の参院選は衆参同日選挙になると新聞各紙が予測記事として報じている。2月に「混迷から危機へ」というタイトルでブログに書いた。その危機の中心に挙げたのが、昨年10月-12月の家計調査における消費支出と収入の数字であった。そして、この予兆は昨年夏のブログにも書いた。そして、こうした危機は年末の売り出しも低調で、年が明けても百貨店をはじめとした初売りは案の定活気を示す数字にはならなかった。そうした景気を表すかのように、1月に入ると一斉に株の乱高下として現れた。そして、その1月の家計調査における消費支出は▲3.1%、勤労世帯の実収入も▲1.3%の減少となり、かなり深刻な消費となっている。企業の設備投資も低迷しており、1月-3月のGDPは昨年10月-12月のマイナスに引き続きマイナスになると多くのエコノミストが予測をしている。

ところで国際金融経済分析会合に出席したノーベル経済学賞の受賞者ジェセフ・スティグリッツは周知の『世界の99%を貧困にする経済』(徳間書店刊)や『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店刊)といった著作で知られている研究者で、クリントン政権の大統領経済諮問委員に参加し、1995年6月経済諮問委員長に就任した人物である。昨年9月の格差是正を求めた若者によるウォール街占拠運動を支持、実際に運動にも参加している。そして、世界経済は米国も含め決して良い状態ではなく、当然日本における増税は先送りすべきと提案した。
また、ニューヨーク・タイムス紙にブログを持ち日本でも知られているクルーグマンはもともと増税先送り論者で「日本では、需要が弱く、デフレマインドがおよそ20年間続いていたが、危機的な状況にうまく対応してきた。しかし、同じ状況がヨーロッパやアメリカでも見られる。」と記者団に語っていた。ちなみに、クルーグマンは米国民主党の大統領候補予備選に出馬しているあのクリントン前国務長官を追うサンダース上院議員の参謀役を務めていると言われている。クルーグマンもスティグリッツもいわゆるリベラリストであり、需要創造論者ということから原始ケインズ主義者と揶揄されている。また日本のマスメディアは消費増税のみ焦点を当てているが、なぜ先送りすべきかその考えの背景をも知っておくべきであろう。

ブログを書いている時にベルギー・ブリュッセルでパリのテロと同じようなISによる連続テロが起きたと報じられた。パリ同時多発テロの時、シリア難民に紛れ込んできたテロリストによるものと日本のメディアは決めつけていたが、今回のベルギーにおけるテロを見るにつけ、「ホームグロウン・テロ」という言葉に表されているように問題の根っこは貧困と差別というヨーロッパ社会自身にあり、ISはそのきっかけと支援をしている構図が再び明らかになっている。
また、ヨーロッパ経済で唯一堅調な成長を見せるドイツであるが、少し前にドイツ銀行が経営危機にあると報じられたが、実は一瞬まさかと思った。周知のように、ドイツ銀行はメルケル首相の指示で、問題を起こしたVWの倒産を防ぐ為1兆円を融資した銀行である。ドイツ最大の銀行であるそのドイツ銀行が経営危機に陥り、不良債権と巨額負債を抱えているとのこと。一昨年までは中国の成長の恩恵を受けていたヨーロッパ、特にドイツ、しかも自動車業界がこのような状況にあることを思うと暗澹たる思いにかられる。

本題に戻るが、私も先送りすべきであると考えている。ただ「先送り」を選挙目当ての政治の争点にして欲しくない。アベノミクスの評価は必要であるが、「先送り」の論議の中には必ず消費増税=景気低迷の「犯人探し」が出てくる。いわゆる三党合意であるが、その旗を振ったのは民主党野田政権であり、自民党は谷垣総裁である。民主党が政権党になった時、政権中は消費増税はしないとマニフェストを持って国民に約束した。多くの国民はいつかは増税という負担はしなければならないと考えていたが、その約束は破られ、また安倍政権が発足し、その消費増税の経済に与えた大きな影響によって、結果「先送り」した。こうした経緯を踏まえ、必ず「泥仕合」になることは間違いない。「税」は国民一人ひとりの義務であると同時に、どんな国にしていくのかというビジョン共有が不可欠となる。社会保障のあり方を単なる負担と給付の関係から見ていくのではなく、グローバル経済時代の「税」とは何かという視座も必要である。
例えば、数年前から寺島実郎さんが提唱している国際連帯税といった税の実施である。国際連帯税は莫大な投機的短期資金が引き起こす金融危機の問題、あるいは貧困・感染症や気候変動・大災害の問題といったグローバル時代の税への取り組みである。ヨーロッパではかなり進展しているが、日本では党派を超えた議員連盟が発足したが、その後政権交代もありストップしたままである。
あるいは理想論ではあるが、消費税を元の5%に戻し、本来あった「需要」を再創造させ、法人税を引き下げるのではなく、逆に税率を上げ、330兆円とも340兆円とも言われる内部留保をそれら新たに生まれる需要のための設備投資や賃金に使う、という考え方である。勿論、できないことは百も承知であるが。

私は金融のプロではないが、株式市場を始め市場は既に「先送り」を織り込んだ相場になっていると思う。そして、8%から10%への増税は2020年の東京オリンピックの2年前2018年に実施と想定されるであろう。恐らく日本国内景気はオリンピック前年2019年にピークを迎えることとなるが、そのピークに向かう中での増税実施というシナリオである。ただ、こうしたシナリオは首都圏が中心となり、地方はシナルオのような高景気の恩恵は受けないということはない。
そして、昨年夏にも書いたことだが、訪日外国人市場はこれからも拡大するであろうと、その拡大に伴い、実は「インバウンド・バブル」とでも表現し得るような変化が出始めている。この市場は年が明けても前年実績を大きく上回り、ある意味順調に伸びてはいる。先日国交省から公示地価の発表があったが、首都圏及び大阪の商業地の地価が上昇している。これは訪日外国人市場、ショッピング市場が今後も伸びていくであろうということからの商業地の地価上昇である。
また、訪日外国人急増によるホテル不足は深刻で民泊問題も出てきたが、東京では親類泊、友人泊といった「縁」を頼った宿泊も広がっている。こうしたホテル問題の他にも福岡で発覚した中国人の爆買い目当ての「キックバック商法」、観光物産店とガイドとが裏で結びつき、売り上げの数%をキックバックさせるもので中国人観光客からクレームが出てきた事件である。こうした観光客をある意味喰いものにする商法は昨年秋ごろから広がってきている。京都の友人からもB級グルメどころかC級でもない、「なんちゃって和食」どころか、「まがいもの和食」の店が横行しているという。新宿の歌舞伎町どころか、世界の行ってみたい観光地NO1の京都にも及んでいる。こうした急激に伸びている市場には必ずついてまわるものではあるが、訪日外国人の観光興味は日本人のライフスタイルやその根底にある精神文化を体験実感してみたいとしており、間違った日本観、バッドジャパンが生まれ始めている。
日本の観光産業はやっとその一歩を踏み出したところである。インバウンドバブルに浮かれてはならないということである。そして、この一歩はある意味アニメなどのサブカルチャー産業と共に日本の産業構造転換の一歩となる。消費増税が先送りされている間に、この市場を確たるものにしなければならないということだ。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:19Comments(0)新市場創造