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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2014年09月15日

極端消費の時代  

ヒット商品応援団日記No592(毎週更新) 2014.9.15. 

日本マクドナルドの8月の既存店売り上げが前年同月比マイナス25.1%であったと報じられ、その極端な売り上げ減が話題となっている。仕入れ先だった中国の食肉加工会社、上海福喜食品(上海市)が期限切れの鶏肉を使っていた問題が7月20日に発覚。商品の安全性を不安視する消費者が利用を控えたこともあるが、前年実績を下回るのは7ヶ月連続である。
低迷を続けるマクドナルドの最初の失敗は昨年1月から始めた九州地区などでの100円バーガーを始めとした値上げのテスト活動であった。そして、同年7月に発売された1000円バーガーも思うように客単価が上げられなかった。大きく言えば、デフレの旗手と言われ勝ち組の一人とされてきた戦略の転換であったが、客単価の伸び以上に客数が落ち込み、結果として売り上げもマイナスになったということである。
そして、また再び100円バーガーを復活させる。実はこうした「迷走」も顧客離れを加速させていると見るべきである。そして、日本ではほとんど知られていないが、お膝元の米国ではコンシューマーレポート誌によれば世界一まずいハンバーガーと酷評されている。

マクドナルドについてはもう一つ話題となっていることがある。それは9月5日に期間限定で発売された「ハッピーセット」で、店頭には子供達の行列が見られるキャンペーンとなっている。実はハッピーセットにはバンダイナムコグループの人気コンテンツ「妖怪ウォッチ」「アイカツ!」の限定カードが付いたもので「おまけ」を求めての行列である。
「妖怪ウォッチ」は、「ポケモン以来の社会現象」とも紹介されるほど子供たちの間で大ブームとなっているコンテンツで、1980年代に社会現象となった「ビックリマンチョコ」を想起させるほどである。

周知のようにビックリマンチョコはチョコレートを食べずにおまけシールを集めることに熱中し、チョコをゴミ箱に捨てないようにと社会現象にまでなったメガヒット商品である。特に10代目の「悪魔VS天使シール」は凄まじく月間販売数1300万個と記憶している。ビックリマンチョコのストーリー性&ゲーム性の中に当時の消費社会を「物語消費」として言い当て専門家もいたが、物語=情報という虚構世界を現実世界=チョコに置き換えて行く開発であった。チョコというモノ価値から、物語を読み解く面白さ=情報価値への転換である。そして、このチョコの主要なマーケットは「新人類」と呼ばれ、以降「宇宙戦艦ヤマト」の熱狂的なフアンへとつながっていく。

さてマクドナルドがこうした物語消費という視点を持ってハッピーセットを発売したとは思えない。単なる人集めの「おまけ」とした一過性のプロモーションとしてであろう。このプロモーションの成功をどう見るかであるが、根底には過剰情報時代のマーケティングの難しさがある。それは消費を刺激する即効性のある要素としては、まず「低価格」があり、更には流行の「ゲーム」や「遊び」といった情報価値がある。更に情報価値をもう少し広げるならば、モノ価値とは別の例えばデザインもある。そして、それが成功すれば一気に売り上げが上がる。しかし、そうした情報を次から次へと継続しない限り、顧客は購入を止め、売り上げもぴたっと止まる。プラスであれ、マイナスであれ、極端から極端へと振れるいわゆる極端消費の時代にいるということである。

ところで、マクドナルドはこの数年間「価格」に振り回され迷走し、そして今回の「おまけ」付きのプロモーションである。米国のコンシューマーレポートではないが、根本はメニューにあり、メニューを変えない限り現状からの脱却は難しい。セブン&アイグループのお荷物と言われてきた赤字続きのファミレスのデニーズが再生したのもメニューであった。今までのメニューを見直し、約7割ほどのメニューを入れ替えたと聞いている。飲食業でメニューを変えるということは極めて大変である。しかも7割ものメニューであり、仕入れから、厨房・オペレーションに至るまであらゆる人とシステムの改革が無ければ不可能である。つまり、デニーズは根底からの「改革」を断行したということだ。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:14Comments(0)新市場創造