プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
インフォメーション
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 16人

2014年07月01日

5月の家計支出は前年同月比8%減の意味 

ヒット商品応援団日記No585(毎週更新) 2014.7.1. 

先週総務省から5月度の家計調査の発表があった。1世帯(2人以上)当たりの消費支出は27万1411円と前年同月比で8.0%減少(物価変動の影響を除いた実質)したと。多くのエコノミストは消費増税前の駈け込み需要の反動減であると繰り返しコメントしているが、実は駈け込み需要を大きく上回るマイナスであるということを指摘する専門家は少ない。新車の販売台数も4月と同様の傾向で普通車や小型車などの登録車は、5.6%減。内容も軽自動車は5.3%増となっており、より経済的にも合理的な軽自動車の利用傾向が続いている。勿論、住宅需要も予測以上に落ち込んでいることは前回のブログにおいて指摘をした通りである。。

既にこうした消費の落ち込みを想定してほとんどの百貨店はボーナス狙いのお中元セールを前倒しスタートさせている。しかし、一部大手企業の増額ボーナスは予定されているが、5月の勤労者世帯の収入は前年同月比4.6%減となっており、依然として収入は減りこそすれ増えてはいない。
総務省が行っている家計調査にはいわゆる年報として、年収を5分位(20%毎)に分けてその消費傾向を発表している。平成25年度はまだ集計されていないが、一昨年平成24年度は以下のようにその消費傾向が報告されている。

           世帯年収   消費支出(月)  消費性向
第Ⅰ階級    352万以下    167,863 円     80.7%
第Ⅱ階級 352~486万円  221,356 円  75.3%
第Ⅲ階級 486~624万     258,696円      72.1%
第Ⅳ階級  624~828万   318,713円   72.3%                     
第Ⅴ階級  828万円以上 417,523円  67.6%



家計調査の活用法についてはここではテーマとしないが、「誰を主要な顧客とするのか」ということを含め、各業界、各企業のビジネスプランの立案には必ず大きな意味での消費環境の分析基礎データとして使われている。そして、この平均消費性向を見ていくと明確であるが、所得の高い第Ⅴ階級ほど消費増税分の吸収度は高く、所得の低い第Ⅰ階級ほど消費増税は重たくなっている。問題は5月の家計支出が対前年同月比8%減という結果であり、しかもその8%は平均値であり、第Ⅰ階級及び第Ⅱ階級はかなり萎縮した消費、氷河期に入ったような消費の様相を見せていると理解すべきである。また、一方第Ⅴ階級においては消費増税の影響はそれほど大きくはないと想定される。今後の消費の動向を大きく左右するのが第Ⅲ階級及び第Ⅳ階級となる。ちなみに、1980年代以降多少の変化はあるものの平均消費性向の平均値はほぼ72%前後となっている。
また、消費税の逆進性という問題解決のために、食料品などの軽減税率を導入すべきとの論議もこうした平均消費性向の実態を踏まえてである。

ところでイラクで再び戦乱が始まり、結果原油価格が上がり、ガソリン価格だけでなく多くの消費に影響が出てくる。エネルギーのほとんどを海外に依存している日本においてはストレートに物価の上昇へと向かうこととなる。しかも円安というなかにあってである。先日発表があったがユニクロの秋冬物商品が7月1日から値上げするが、他にも原材料高もあってハムやソーセージ、バターあるいはチョコレート菓子も値上げとなる。春以降、電気・ガスを始め小麦粉や食用油などの値上げにプラスした値上げである。上記5分位にあって第Ⅴ階級の場合には物価上昇分は消費税分を含め十分吸収できるが、第Ⅰ階級の場合は極めて難しくなる。

5月の家計支出8%減の意味は単なる駈け込み需要の反動としての消費ではなく、消費増税及び物価高騰が消費を大きく後退させていると認識しなければならない。この傾向がどこまで続くのかということであるが、今年のGWはケチケチ節約旅行となったが、目前の夏休みの旅行内容如何ではあるが、下手をすると増税&物価高騰による「複合不況」に向かうこととなる。
しかし、こうした消費傾向にあって、成長する市場もある。少し前のブログにも書いたが、銀座三越における訪日外国人への免税品販売であったり、地場の農産物や海産物ばかりでなく、ご当地グルメが楽しめる道の駅。あるいはブランド品を安く買うだけのアウトレットではなく三井不動産が開発したアウトレットパーク木更津のように「食」を中心としたエンターテイメントパークのように新し楽しみ方に活路を見いだす市場も生まれている。そして、相変わらず食べ放題を中心においた8000円前後の日帰りバスツアーは大人気である。
また、新市場へのチャレンジ以外のもう一つの対応策としては、前回の未来塾「砂町銀座商店街」で学んだように、モノマネに走らず目の前にいる顧客の求めに応え商品を磨き続けること。そして、何よりも「売り切る力」を持つことによって顧客が求める「安さ」に応えるという商売の原点に立ち帰ることだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:11Comments(0)新市場創造