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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2011年07月10日

2011年上期ヒット商品番付を読み解く

ヒット商品応援団日記No512(毎週更新)   2011.7.10.

日経MJから上期のヒット商品番付が発表されていたが、あまり見るべき消費傾向はないのでブログに書くのを止めようかと思ったが、書くことがないというのも大きな消費傾向の一つである。
書くことがないという表現通り、東西横綱に該当するヒット商品はない。勿論、3.11大震災の衝撃は消費に大きく反映し、日経MJは「世のため消費」と名づけている。
扇風機を代表とした節電ツールや暑さを工夫した涼感衣料、震災時に電話が通じない状態のなかで家族と連絡を取り合ったFacebookといったサイト、更には夜行バスでいくボランティアツアーや「メイドイン東北」といった支援消費、こうした震災による変化を「世のため消費」と名づけたもので、マスメディアが後追いで報道していた事象を取り上げたにすぎない。

ライフスタイル変化を促したのはこのブログにも書いてきた自己防衛商品群である。懐中電灯といった既存の防災グッズばかりでなく、アウトドア商品をも防災商品としたり、3.11夜の帰宅困難を経験した首都圏の人間にとってかかとの低い歩きやすい靴や通勤利用の自転車が販売好調であるように自己防衛市場の広がりは極めて大きい。そして、この市場に続々と新製品が導入されているのが家庭用の蓄電池である。LED電球が量産効果によって価格が下がり購入しやすくなったのと同様に、家庭用蓄電池も今以上に安くなればかなり普及していくものと予測される。
何故、こうした自己防衛商品が売れるのかは、東北被災地とは異なる震災体験、鉄道が止まり、電話も通じず、道路は渋滞麻痺、それに震度5強という地震体感をしたことと、その後の原発事故に対する政府・東電の情報隠蔽への不信が自己防衛へと向かわせた。こうした不信は今般の脱原発を巡るエネルギー政策の混乱に見られるように、企業も、個人も、更に自己防衛へと向かわせる。

特に、福島原発事故による放射能汚染の広がりがやっと分かり始めた。結果、福島だけでなく100Kmも離れた場所にもホットスポットが次々と見つかり、避難と共に汚染への影響を少なくするための除染や子ども達の体内被曝を始めとした健康対策が急務となっている。政府の無策に頼らず、市民自ら線量計をもって汚染状態を調べる行動へと向かわせている。こうした目に見えない放射線への不安や恐怖はどんな消費行動をとらせていくのか、自己防衛の広がりと深化が大きな課題となる。
まず、防衛の第一は食の安全である。3月末のブログにクールジャパンはダーティジャパンになってしまったと書いた。その中心は海外における「食」を想定したものであったが、最近では少しづつではあるが、訪日海外客も増えてきた。そして、海外での日本食レストランも踏ん張っているようだ。しかし、米国が福島原発を中心とした80Km圏からの避難を解除していないことを冷静に見ておかなければならない。その前に、国内のダーティジャパンをどう解決するかだ。昨日、新たな工程表が政府から発表された。廃炉までの時間を数十年とされている。つまり、福島県住民の人達が放射線汚染との付き合いと共に、ダーティジャパンというイメージともこれから数十年付き合い、そして払拭する努力、除染も当然であるが、内部被曝に対する対策、特に食の徹底した検査体制が必要になるということだ。

ところで日経MJが名づけた「世のため消費」の先には、私が予測し推測する新たな「公」づくり、新たなコミュニティづくりに向かうと考えている。そこにおける消費の在り方である。3.11によって、生産地=東北、消費地=東京という構図を日常の農水産物から電力までの在り方が再認識された。政治、経済における分散化がこれからの課題になると思うが、生活においては「どんな世」へと向かう消費となって表れてくるかである。私はそれを新しいLOHAS的ライフスタイルになるであろうと仮説した。
実はそのモデルは京都を始めとした地方には今なお残されている。復興構想会議の提言で唯一考えるに値するのが「減災」という考え方である。この「減災」とは何かを一言でいうと、過去先人達は生活のなかに地震や津波といった自然災害を少なくやり過ごす知恵を身につけてきた、そうした自然との付き合い方、知恵に学ぶということである。
これは自然との付き合い方であり、生活レベルで考えれば、例えば節電といった節約精神は京都では「勿体ない」とし、最後まで使い切る、生かし切る方法が日常化されている。都市では扇風機と涼感衣料となるが、暑い京都では風通しの良い壷庭のある住居構造であり、夏の風物詩となっている鴨川沿いの床(ゆか)もそうした涼をとる知恵である。自然をねじ伏せるのではなく、自然をやり過ごす、時には逃げる、そうした自然観が生活歳時のなかに残っているということである。

京都をそのライフスタイルモデルとしたが、地方に、歴史・文化に埋もれた知恵や工夫を掘り起こすことへと向かうであろう。10数年前に起きた和回帰のような表象部分を生活に取り入れるのではなく、生活思想として、自然思想としてである。クールジャパンの復活もこうした生活思想に依拠した時、世界に誇れる生活文化国家となる。
残念ながら、福島はダーティジャパンの象徴として世界からイメージされている。汚染された土壌や緑の除染、安全の取り戻しは不可欠であるが、もう一つ加えるとすれば、例えば避難地域となった飯舘村のように、手間ひまを惜しまない心を意味する「までい(真手)」が残る美しい生活文化を守ることだ。それがクールフクシマへの道へと至る。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:14Comments(0)新市場創造