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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2009年09月05日

デフレの波

ヒット商品応援団日記No398(毎週2回更新)  2009.9.5.

新政権誕生によって何が変わるか、先行指標である株式市場などに注目点が出てきている。しかし、現実の消費に変化が表れるのは子育て支援のような新たな政策が実施されるのは来年の春以降である。9/2の日経MJも「子ども手当」と共に、巣ごもり状態の主婦に対し、財布が緩む「ママ友消費」に着眼した記事を掲載している。しかし、そうしたトップ記事の裏の2面では消費価値観の変化を調査を元にコメントしている。その結論であるが、好みや個性といった価値は下がり、とにかく値段の安いものへの比重が高まっている、という至極当たり前の結果だ。一つだけ注目すべきは、私が何年も前から指摘している「誰を顧客とするのか」という点である。調査ではいくつかのライフスタイルグループに分類し、その価値観を明らかにしている。

そうしたライフスタイルセグメントも必要ではあるが、もっと単純化した戦略を採っているのが幅広い顧客層を取り込んでいるファストフードやファストファッションである。調査などやらなくても、実際に「個性×価格」の関係を具体的メニューとして行っている企業があり、それらは良きケーススタディとして学習すればよい。
幅広い顧客層を取り込むには、明確な戦略が必要であるが、例えばユニクロであれば中心にユニクロブランドを置き、低価格ゾーンには980円ジーンズのguといった具合である。恐らく、利益を出し得る量産単位を見据えながら個性×価格=商品(ブランド)をセグメントしながら導入していくと思う。ファストフードのマクドナルドにおいても、個性×価格=商品という同じ構造の戦略を採っている。中心にはビッグマック等を置き、低価格ゾーンには100円バーガーを置き、若者向きにはガツン系の「メガシリーズ」、あるいは今実施している「月見バーガー」(270円〜290円)のような季節・限定商品で変化を取り入れるといった具合である。

しかし、こうした「個性×価格」という構造はどちらにウエイトがかかるかは別として、商品の基本的な構造としてある。ここ2年ほどの巣ごもり生活における「個性×価格」の構造は次のように表すことができる。

   「個性」 < 「価格」
      ↓
   ・代替消費
   ・○○したつもり消費
   ・アウトレット消費

個性を「こだわり」というキーワードに置き換えても同じである。更に言うと、他に変え難い、固有性、文化性、こうした独自価値は総体的に低くなっている。その象徴がハイブランドである。調査結果にも出ているが、こだわり、高級感、といったキーワードのグループは縮小している。

ちょうど次の号である9/4の日経MJに割安なPB(プライベートブランド)に対するNB(ナショナルブランド)の逆襲が始まったとする記事が載っている。その逆襲の代表例として、ハウス食品のカレーを挙げているが、嗜好性(辛さや味)の強い商品、その嗜好に応えた品揃えが用意されているからPBには負けないのであって、日経が書くほどの逆襲でもなんでもない。時に日経MJもスポーツ紙のようにタイトルアップしましたということであろう。

少し前に、消費氷河期の入り口まで来ていると書いた。これから年末にかけて、特に地方においては雇用も企業倒産も時間を追うごとに悪くなっていく。鉱工業生産といった経済指標は底を打ったというが、生活実感では更に悪くなる。デフレ傾向も更に進んでいる。銀座松坂屋では既に秋冬物のバーゲンが始まっている。スーパーマーケットのエブリデーロープライスと共に、エブリデーバーゲンが百貨店にまで進んだということだ。集客装置としてはそのほとんどが価格戦略であるが、それ以外では「食」となっている。日本で一番来店客数の多い、年間4500万人と言われている阪急百貨店梅田本店が9月3日建て替え棟を開業した。その阪急百貨店は食品売り場を3フロアにし、デパ地下ならぬデパイチという百貨店の顔である1階フロアを食品売り場にしている。従来であれば1階はコスメやジュエリー、あるいはハイブランドの売り場であるが、食品売り場にしたことはまさに象徴的な出来事としてある。

9/4の日経MJに一つだけ面白い記事が載っていた。不用不急の象徴である米国カジノ産業のラスベガスなどの今についてである。リーマンショックから1年弱経過したが、大不況を直接受けたカジノ産業であるが、運営会社は相次いで倒産し、高級ホテルも顧客を戻すために大幅な値下げを行っているが、回復するには来年後半であろうとの記事である。日本の場合はどうであろうか、30兆円産業と言われているパチンコ業界を調べたが、今年の1月時点では大手の倒産は無いものの中小の倒産は高水準で推移しているとのこと。直近の情報は得ていないので何とも言えないが、日本のパチンコ産業も大きな打撃を受けていることは間違いない。悪い冗談と思うが、来春から始まる「ことも手当」の消費先としてパチンコ業界も狙っていると指摘する人もいる。

いずれにせよ、大小あるがデフレの波が収まることはない。1990年代後半、デフレの旗手と言われたユニクロ、マクドナルド、吉野家、こうした企業の在り方は今や至極当たり前のこととなった。新政権の構想としては、まずは生活と雇用の安定への支援を行い、内需活性をはかりながら次なる成長戦略、おそらく東アジア、東南アジアへの輸出拡大と米国オバマのグリーンニューディール計画への参加といった方針であろう。つまり、消費という側面においてはそれほど大きな転換はないということだ。ただ、今までもそうであったように、好不況はまだら模様である。「誰を顧客とするか」は流通だけでなく、全業種にわたる課題だ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 16:05Comments(0)新市場創造