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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年12月10日

2008年ヒット商品を読み解く(2)

ヒット商品応援団日記No324(毎週2回更新)  2008.12.10.

前回社会的注目を集め実績を残したヒット商品、その裏側に潜む価値潮流について4つキーワード化してみた。今回は目まぐるしく変化する消費、特に数年前ヒットした価値潮流はどのように変化したのか、あるいは消滅してしまったのか、誰もが「何故」と思うことを中心に読み解いてみたい。

5、振り子消費からの脱却
2008年はダイエット・健康・美容という大きな潮流にヒット商品が生まれていない。勿論、誰もが関心は今なお持っているが、寒天ダイエットから始まり、現在はバナナダイエットであるが、最早バナナも終わってしまっている。同じようにコエンザイムQ10ブームは数年前に終わり、現在はコラーゲンやヒエルロンサンブームで、これもまもなく終わるであろう。ダイエットにおいては「レコードダイエット」に代表されるように、ダイエット商品に依存するダイエットではなく、自身の意識を変えることによるものへと変化してきている。
健康志向においては社会的な注目を浴びてはいないが、ウオーキングブームは今なお続いており、その延長線上にハイキングや散歩ブームがある。また、小さな子供の情操教育を含めたハワイアンダンスはすっかり定着し、シニアにおいても社交ダンスが普及し、こうしたフアンの中から生まれたのが、歌手の団塊の星秋元順子である。
一方、昨年からの特盛り、デカ盛り、ガツン系といわれた高カロリー食の復活は、11/末関東地域に発売されたマクドナルドのクオーターパウンドのように今年も続いている。勿論、学生や若いサラリーマンが主対象であるが、ホテルを始め多くの飲食店で食べ放題やブッフェスタイルへと広がりを見せ、その割安感の支持は定着しつつある。今回のヒット商品番付の中に、キリンビールのアルコール度数の高い「氷結ストラング」が入っているが、従来のソフトアルコール時代に対する振り子消費によるもので、いわばガツン系アルコール飲料と言えよう。
さてこうした消費傾向をどう読むかである。個々人がそれぞれのダイエットや健康への自己認識を持つようになった。あるいは原点に戻った、と。つまり、情報によって振り子のように消費していたことへの見直し、いわば情報依存型からの脱却を生活者は始めたと言うことであろう。

6、あれこれRE(再生)アイディア、使用価値の最大化
テーマとしては提供者にとっては保有資源の再生・最大化であるが、顧客の側も選択肢の広がりと無駄への理解が、相互にかみ合った新しいメニュー業態が生まれてきた。飲食においてはファミレスを始め、時間帯顧客向けとして特に朝食メニューの充実が計られ2毛作、3毛作は当たり前となった。そうした丁寧なMDは、カラオケルームにおけるアイドルタイムの会議室活用、レンタルオフィスシェアリング、更にはカーシェアリングへと広がり、最近では、ブランドバッグのレンタルまで注目されるようになった。こうした傾向は所有価値から使用価値への転換であり、その使用価値を最大化させるものとしてある。企業間でも、「共同仕入れ」「共同開発」「共同物流」「共同販売」といったコラボレーションは最早当たり前のこととなった。
空き室、空きビル、空き地、空き施設、空き時間、使われないブランド商品、使われない車や道具類、・・・・もったいない精神による用途変更や目的変更、新しい目的の付加、転用といった従来視点を変えることによる新しい価値の創造、「生かし切るアイディア」の現場経営は垣根を超えて始まっている。このビジネスの先駆者は高級ホテル・旅館の空き部屋を安く提供している周知の一休である。売れない新築マンションを安く買い取り、再販する業者も既に活動している。スクラップされた郊外型飲食施設を居抜きで契約し、飲食のディスカウント業態で急成長している事業者も出てきた。少し視野を広げれば、今回番付に入っている福助の「柄タイツ」なんかは、オシャレしたいが服を買うにはチャット手が届かない女性への「ファッショントレンド代替商品」である。これらはいわば変化に伴うニッチ市場であるが、不況期には思わぬヒット商品が生まれる。

7、流通サービスの再編
周知の通り、日本の流通で今なお成長しているのがネットを筆頭にした通販ビジネスである。逆に右肩下がりの筆頭は百貨店を始めとした有店舗流通である。店舗で実物商品を見てから、ネット通販で注文することは至極当たり前のことになっており、そうした背景には価格が安いという理由があってのことだ。都市部においては大手スーパーが続々とネットスーパーに力を入れ始めている。IT技術の急速な浸透がデフレを引き起こしたと言われているが、有店舗の意味合い、ビジネスモデルが根底から検討せざるを得なくなっているということだ。
一方こうした中でユニークな経営、新しい流通サービスを行っている企業がある。鹿児島県阿久根市にあるスーパーAZである。人口2万4000人という過疎地にある巨大スーパーで生鮮食料品を始め、車の販売、GS、コンビニ、更には仏壇まであらゆるものが激安で売られている。このスーパーの特徴は、高齢者に対しては消費税分5%のキャッシュバック、片道100円のお買い物バスの運行、更には地産地消は言うに及ばず地元の高齢者が従業員、そして24時間営業という単なる効率を第一義とした業態とは正反対のビジネスである。そして、なんと年間集客数は650万人に及ぶという。初期のホームセンター「ジョイフル本田」や書籍の「ジュンク堂書店」と同じ考え方の経営、業態である。
過剰な物と共に過剰な流通にあって、スーパーAZは流通におけるサービス業態、過疎地でのライフセンターとしての役割を果たしており、一つのビジネスモデルと言えよう。
問われているのは従来の流通の過剰であり、顧客が変われば流通もまた変わるという原則に立ち帰るということだ。

ところで、残念ながら医療や年金など既に起こっている「未来」不安に加え、「今」起こりつつある雇用不安が社会不安へと拡大しつつある。既にその予兆は秋葉原殺傷事件のように出てきている。恐らく、根も葉もない風評被害も出てくるであろう。こうした時代には、元気、明るさ、チョット笑える、ホットする、心理面ではこうした小さな幸せ物語が求められる。そして、このぐらいなら手が届くという小さな価格が不可欠となる時代だ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:41Comments(0)新市場創造