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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年09月10日

もう一つの沖縄

ヒット商品応援団日記No297(毎週2回更新)  2008.9.10.

ブログの更新が1週間ぶりになってしまったが、実は好きな沖縄に行っていた。目的は沖縄の若い世代による「コト起こし」を応援する小さな塾を開いていることと、「オールディズ」をテーマに沖縄県内の主要な4バンドが競演するライブイベントが音楽観光による街起こしとしてスタートしたコザのミュージックタウンで行われたからである。

沖縄=音楽というイメージは、マキノ正幸氏によって創られた「沖縄アクターズスクール」から安室奈美恵やSPEEDといった多くのミュージシャンが生まれたことによるものであろう。今回行われたコザミュージックタウンには昨年夏オープンした直後に見に行ったことがある。大きな音が流れているなと思ったが、その音は中学生によるブラスバンド練習によるものであった。今回、案内していただいたM氏に聞くと学校教育の必須科目として楽器演奏が組み込まれているという。先祖を迎える盆には歌い踊り、豊作を願って踊る。こうした日常に即した生活の中に歌や踊りはあった。お盆は単なる休日と化し、分業化された現代では豊作を願うことなど既に理解を超えたものとなっている。ああ、まだ沖縄には歌い踊る方法が教育の場でなされているなと思った。

私が沖縄が好きになった理由は、南国リゾートのきれいな海や空といったものではなかった。今から10年ほど前、初めて一人で沖縄の路地裏歩きをした。国際通りから市場通りに入り、更に先に進むと段ボールにフルーツを入れただけの露店があった。後に分かるが、それまで見たことも無い、赤いドラゴンフルーツがあった。立ち止まって見ていたのだが、露店先で話してい「おばあ」と「おじい」の話がまるでわからないのだ。外資系企業に数年勤めたことのある私にとって、NYの街中で話されている会話は少しは理解できる。しかし、理解不可能、まるで分からないことにショックを受けた。知らないことは山ほどあるが、これほどまでに理解を隔てた文化が身近なところにあることに驚かされた。それまで20数回は仕事や遊びで沖縄を訪れていたが、空港とリゾートホテル、玉泉洞や琉球ガラス村、国際通りといった観光コース、車窓から見える米軍基地や町並みといった、ある意味点と点を結んだ沖縄でしかなかった。もう一つの沖縄にふれてみたい、それが始まりであった。

こうして始まった沖縄路地裏歩きの楽しみの一つが食であった。それまではホテル内の沖縄料理、宮廷料理の料亭那覇、沖縄舞踊が楽しめる四つ竹、あるいはネット上に出てくる山本彩花といった店へ行ったが、料金を考えるとそれほど美味しいとは思えなかった。観光客が行かない、地元の人達が日常食べている食堂へと足をのばした。時にはうさんくさく見られたが、それは仕方がないことである。沖縄そばから始まり、ナーベラー(へちま)の味噌煮、チャンポン(長崎チャンポンではなく、野菜炒めの卵とじをご飯にかけたもの)、フーチャンプルーやゴーヤチャンプルー、ジューシー(沖縄の炊き込みご飯)、更にはヤギ汁やテビチの煮付けまで。私にとってヤギ汁以外はどれも美味しい食べ物であった。

もう一つの楽しみが路地裏ならではの素敵な街並である。私が沖縄へ行けば必ず歩く通りがある。それは国際通りと久茂地川とに挟まれた通りで、住宅やカフェが混在する通りであるが、その建物の軒先はハイビスカスやブーゲンビリアといった鮮やかな植栽で飾られている。その通りには久茂地小学校があるのだが、その小学校にも季節の花々がフラワーポットで栽培されている。音楽もそうであるが、軒先を花々で飾る生活とは文化度の高さを示していると思う。
今、京都の友人に言わせると、京都観光の中心は路地裏観光へと変化している。沖縄もそうした生活文化を楽しむ観光へと変わり得れば、もう一つの観光資源を生かすことになると思う。以前、裏が表になり、路地が本通になる、あるいは賄い料理という裏メニューが表メニューになると書いたことがあった。興味・関心は、先へ、奥へと進化するもので、表裏を逆さまにしてしまう時代だ。恐らく、今回のコザミュージックタウンで行われたライブイベントも、那覇の裏通りの素敵な街並も、もう一つの沖縄観光、沖縄生活文化観光のメニューになるであろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:06Comments(0)新市場創造