しあわせ消費の時代

ヒット商品応援団

2008年01月16日 13:38

ヒット商品応援団日記No234(毎週2回更新)  2008.1.16.

笑いや歌は時代を映し出す鏡のようだと言われているが、その映し鏡が少しづつ変わってきている。昨年の流行語大賞にも選ばれた「小島よしお」は年が明けあらゆるバラエティ番組に出演している。少し前には「レイザーラモンHG」「ザ・たっち」「波田陽区」・・・・同じような使われ方をし、まるでコンビニで売られている商品が売れなくなれば2週間で棚から外される光景を見ているようだ。確かに視聴率という売上がとれなければ外されても仕方は無いが、そんな笑いという商品が少しづつ変わってきている。

昨年の「M-1グランプリ」で優勝したサンドウィッチマンの笑いは何かほっとさせるものであった。しゃべくり漫才という漫才の本道をゆく、大きな笑い、奇をてらった笑いではなく、マギー司郎の笑いのようにくすっと笑える本格漫才であった。所属事務所は誰も知らない小さな事務所に所属し、敗者復活戦から勝ち抜いたコンビである。今までは大手吉本興業という笑いの大量生産大量販売会社がTVのバラエティ番組というコンビニに大量供給してきた笑いであったが、それとは異なる質の笑いがサンドウィッチマンだ。

停滞、閉塞感が圧し包む時代にあって、「笑い」は歌と共にひとときこころを癒してくれるものだ。一年以上前からこのブログで「サプライズの終焉」というテーマで、劇場型のパフォーマンスは終わったと私は書いた。M-1におけるサンドウィッチマンはまさに時代が求める気分を実証してくれたようなものだ。これでもかこれでもかと、笑いを迫る「過剰さ」はもう終わったということである。諸説あるようだが、元々漫才は「萬歳」と言われ、江戸時代正月に門前で祝う祝福芸が起源であったと言われている。人を笑わせ楽しませてくれる、ひととき幸せにしてくれる話芸であることには間違いない。ある意味幸福世界を映し出したものとしてある。

1980年代後半、バブルの時代に「ひととき貴族」というキーワードに象徴されるひとときリッチ消費があった。20年を経た今、これからの消費は「ひととき幸福」というものになるであろう。少し前に書いた単位革命ではないが、小さな幸福、チョットうれしい、ひととき幸福、といった小さな日常の幸せ感がマーケティングやマーチャンダイジングに求められている。今、小売業や飲食などのサービス業で注目されているキーワードが「ひととき」である。例えば、毎月この日は感謝デーとして50%オフ、あるいはつめ放題100円、といった小さなお得=幸せ感づくりであるが、そこには笑いにつながるゲームなどの遊び感覚がポイントとなっている。

ゴージャス、セレブといった表現のシンボル的存在であった叶姉妹は、作られた姉妹、作られた像であることはそのスタートから分かっていたが、父親との金銭問題による憎悪が表に出てきていることが象徴するように、「ひととき貴族」から「ひととき幸せ」を実感、納得させるものであった。小売業的にいうと、ひとときくすっと笑えるような会話、そんな一言、店頭の雰囲気、そして小さな幸せをもたらしてくれるような商品ということになる。今日の動物園や水族館人気も生物のチョットした仕草や本能の愛らしさにもつながっている。あるいは、地域の町おこし等に使われるキャラクターなんかも同じだ。新しい市場創造ということでは、バラバラとなった個人化社会、個族の時代にあっては、笑いを伴う「しあわせ接着剤」が個と個をつなぎヒット商品となる。(続く)

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