依存症市場

ヒット商品応援団

2007年05月27日 13:39

ヒット商品応援団日記No170(毎週2回更新)  2007.5.27.

依存症、読んで字の如しである。古くはアルコール依存症、パチンコ・パチスロ依存症等、満たされない何かを埋めるために依存するものだが、身体的依存と精神的依存に分かれるが一種の現代病、こころの病である。薬物といった身体的依存は別として、市場の多くの商品やサービスは一種の精神的依存の特徴をもっている。特に、個人化というバラバラ社会の進行に伴い、都市生活者にとって、そのストレスから解放されるための消費はその依存という傾向を強くする。

例えば、若い世代、ティーンにとってはケータイ依存であり、持っていないと不安に苛まれパニック状態に陥る。ゲーム依存やBBS依存、あるいは、ダイエット目的の食事制限なども一種の痩身願望症という依存症と見ていくこともできる。以前書いたサプリメント依存症などは典型的である。また、女性誌には必ず掲載されるうらないも一つの精神的依存であろう。こうした満たされないこころの裏側には不安とコンプレックスがあり、他者との比較から生まれてくるものだ。一時期問題となった美顔器や寝具痩身法などの悪徳商法はこうした依存心理を背景に狙ったものだ。勿論、悪徳商法のような負の側面を持っているが、痩身や整形によって人は生まれ変われるという正の側面もある。しかし、こうした境目のない市場には一種のあやうさがある。

不安の時代、不確定の時代にあって、市場は心理化し、こころの依存というテーマはマーケティングの主要テーマとなった。個人化及び高齢化が更に進み、一人では生きられない時代へと向かっている。依存は人へと向かい、新たなコミュニティ、場が求められている。従来のコミュニティは地縁や血縁あるいは仕事縁、友人縁であったが、個人化の進行と共に情報縁によるコミュニティへと向かう。SNSといった仲間やブログ仲間、といったコミュニティだ。日本のブログが子育て主婦同士による情報交換から始まったのは象徴的である。あるいは江戸時代に盛んであった「連」という一種のクラブネットワーク組織も生まれてくるだろう。偏りの無い情報によってバランスを考えた関係消費の時代へと向かっていくと思う。マーケティングの主要課題は、こうしたコミュニティの創造と発見が目標となる。

私が言う依存症は過剰依存のことであり、誰でもが1〜2は持っている。○○オタク、△△フリーク、××マニア、既成文化や慣習に対するアンチ、反、というカウンターカルチャーとしての意味の新しさを持った世界でもある。あるいは、過剰な性的嗜好を□□フェチと呼んでいるが、いずれにせよ外見からは識別できないものが多い。さて、こうした過剰心理市場の傾向が更に強まっていく中でどうビジネスをしていけば良いのであろうか?売れればそれで良しとする依存症にウエイトを置いたビジネスはいつか問題となる。冒頭で「一種の現代病」と書いたが、全てを自己責任という言葉ですませてはならないと私は思っている。
医者は病気という問題を解決することと共に、患者という人間と向き合い病んだこころを支えるのが仕事である。医者ほどの倫理性を誰もが持つべきとは思わないが、顧客を顧客としてだけではなく、一人の人間として見ていくことが必要な時代だ。結果、場合によっては「売らないこと」もまたビジネスであると考えなければならない時代である。法やルールにおける明確な詐欺とはいわないが、詐欺まがいビジネスが横行する時代にあって、「売らない勇気」が顧客信頼を逆に得る時代に向かっている。(続く)

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