駄洒落気分
ヒット商品応援団日記No143(毎週2回更新) 2007.2.25.
洒落は今で言うオシャレの語源で気の利いたことを指し示すものであるが、洒落に「駄」をつけると何か低級でセンスの無さを感じてしまうが決してそうではない。江戸時代上方から江戸に伝わってくるものを「下りもの」と呼んで珍重していたが、いつしか対抗して江戸の文化が生まれてくる。江戸文化の研究者の方から指摘を受けるかもしれないが、洒落に対する駄洒落は一種のカウンターカルチャー(対抗文化)のようなものと私は理解している。上方の押し寿司に対し、江戸ではにぎり寿司が生まれたように、文化という「違い」を楽しむ時代になってきている。今の流行もので言うと、刺繍されたジーンズに対するダメージジーンズのようなものだ。
ところで、和歌を詠むといった貴族文化は一つの季節行事として残ってはいるが、庶民が本格的に言葉遊びを楽しみ始めたのは江戸時代の川柳だと思う。初代柄井川柳(からいせんりゅう)が始めたものだが、庶民誰でもが参加できるように前句というお題に対し、それに続く句を詠む遊びである。日曜日の夕方日本テレビ系列の「笑点」を見ている方は分かると思う。この前句から続く後の句が独立したのが「川柳」である。連歌の練習としてスタートしたが、懸賞募集をしたことから庶民へと広まったと言われている。今は第一生命がスポンサーとして、同じように募集しているのが「サラリーマン川柳」である。(http://event.dai-ichi-life.co.jp/senryu/2007_best100.html)時代の雰囲気、世相をおもしろおかしく、ユーモアたっぷりに句が作られており、好きな人も多くいると思う。例えば、今年の応募作に次のような句が選ばれている。
◆ 脳年齢 年金すでに もらえます 満33歳
こんな句から発想したのだが、任天堂DSのソフトに「脳齢年金受給ゲーム」といったブラックユーモアゲームなんかも作ったら面白いと思った次第である。この延長線上にはPCなどの「変換違い」や「言いまつがい」といった駄洒落もある。
敢えて、川柳を取り上げたのは、私たちのビジネスの考え方として、時代というお題に対し、後の句をどう詠んでいったらよいかよく似ているからである。しかも、川柳はくすっと笑える、そうそうとうなづける表現形式である。不安ばかりが増幅されている時代、停滞気味の市場情況の中にあって、顧客のこころの扉を開けるにはユーモア、遊び感覚こそ必要となる。以前、「標準語から方言へ」というテーマを書いたことがあったが、この方言をうまく使ったのは吉本の芸人であり、今回宮崎県知事になった東国原さんだと思う。東京に対するカウンターカルチャーとしての方言だ。
つまり、今流行っているものに対し、「アンチ」「反」「逆」を行ってみようということである。例えば、今や1億総健康時代で全てのものが健康を配慮したものとなっている。しかし、”食べたいものを食べる”というマーケットは小さいながらも存在する。マクドナルドの「メガ・マック」は米国では既に売られていない商品である。しかし、成人病をあまり気にしない給与もまだ低い若い男性サラリーマンというマーケットにとって、ある意味ヒット商品となっている。よく問題点の解決こそ、市場機会になると言われて来た。勿論、間違いではないが、逆に「良い点」は何かを探すことの中に、違う何かが見つかることもある。つまり、何が「良い」かという考え方を明確にすることでもあるのだ。どうすれば売れるか、どんなことをやればヒット商品になるかを考える前に、「これよさそうじゃない」「これって、おもしろそうじゃない」といった遊び感覚、駄洒落気分でやってみることも必要だ。以前取り上げた福岡の「こどもびいる」なんかはまさにそうした良き例である。(続く)
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