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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2015年10月11日

「裏」の時代、逆襲始まる 

ヒット商品応援団日記No626(毎週更新) 2015.10.11.

今から8年ほど前のブログに横丁・路地裏について書いたことがあった。当時は2006年から始まったテレビ番組「ちい散歩」が少しずつ視聴率を伸ばし、注目され始めた時期であった。以降、路地裏散歩がブームとなって、消費だけでなく社会の至る所で横丁・路地裏再発見へと向かった。
実は当時のブログを書かせた背景には、北海道ミートポーク社による牛肉偽装事件が起きたことがきっかけであった。既に遠い記憶の中の事件であるが、「見えない世界」における詐欺行為の最初の事件、情報の時代にあっては必ず「裏」であったものが「表」へと出てくる時代に生きていることを実感させられた事件であった。この牛肉偽装事は内部告発によってであったが、多くの人は「裏」に潜む何かへの興味・関心が高まったことは事実であった。

こうした「安くて美味しさ」の裏側にある不安・不信は、2014年7月に起きた使用期限を過ぎた鶏肉を使った日本マクドナルドの事件へと繋がっている。そして、その後の日本マクドナルドは異物混入もあって、極端な売り上げ不振となったことは周知の通りである。「魅力的なメニューの提供」が売り上げ回復の基本となると記者会見で繰り返し発言をしているが、問題は失墜したブランドを回復させられるだけのヒット商品が生まれていないことと理解すべきである。つまり、壊れたブランドを再生させることがいかに難しいかである。

情報の時代を、私たちは「過剰情報が行き交う時代」その功罪を指摘してきたが、裏側の裏側には何があるのか、更にその裏側は・・・・・・興味や好奇心だけでなく、不安や猜疑心が渦巻く時代にいるということでもある。一つの事件によって、興味や好奇心は不安や猜疑心へといとも簡単に一人の顧客の心の中で変わってしまう時代ということである。
勿論、こうした「負」の面だけでなく、知る人ぞ知る隠れ家ブームは続いており、裏であった賄い食が表メニューへ、地下に潜んでいたオタクはアキバ系コミックやメイドブームなどによって通りの表へと出て来た。
そして、重要なことはこうしたことは日本国内だけの傾向ではないということである。情報化とは垣根を超えた世界である。それはこの1年ほど訪日外国人の観光行動についてマスメディアにも取り上げられている通りである。一言で言えば、日本人以上に日本の「裏」を知っているということである。

ところでこうした高度情報社会にあって、ある意味好調な消費を見せているのが「老舗」であり、見えないところで黙々と仕事をしてきた職人による商品づくりである。今まであまり表舞台には上がってこなかった、歴史、伝統、匠、手技、・・・・・機械化された効率の良い大量生産ビジネスではなく、人の温もりが感じられる商品ということになる。
これから先TPPがどう展開されていくのかわからないが、グローバル化に対するローカル化はますます重要な日本産業の鍵となっていく。ちょうど表通りには世界のスーパーブランドが並ぶ表参道、その裏側竹下通りにはもう一つの世界ブランドが存在しているように。こうした東京におけるローカル化の事例だけでなく、前回のブログにも3例ほど取り上げたように、地方ならではの独自なビジネスが育っている。大量生産はできないが、この独自性は決して真似ることができない。グローバル化が進めば進むほど、こうしたローカル化の可能性が大きくなるということだ。

こうした独自世界を持ったローカルジャパンは、クールジャパンとして更に世界へと広がることにつながる。クールジャパンというとコミック、アニメ、禅、サムライ、最近では「和食」となるが、これも京都というローカルジャパンの食である。クールジャパンはある意味裏文化ジャパンであるといっても過言ではない。
ところでグローバルジャパンはどうかと言えば、既に生産拠点を海外に移している自動車産業を始め、例えばユニクロのように新素材開発を踏まえた投資、人材、組織運営などグローバルビジネスへと向かっている。そうしたグローバルビジネスに向かう企業や、あるいは地方もある。都市と地方などといった対比させた視座は既に終えている。求められているのはグローバル化、ローカル化という2つの視座を踏まえた戦略的なビジネス発想である。

そして、この独自性を持つローカルビジネスから世界市場へと進出する、その代表例がラーメンであろう。「未来の消滅都市論」にも書いたが、訪日外国人が食べたい食のNO1がラーメンとなっているように、ラーメンは和食に続くグローバルビジネスへと向かっている。その先頭に立っているのが、博多一風堂であろう。日本文化を海外に売り込む官民ファンド、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は、昨年末海外展開資金として計20億円を支援すると発表している。
1985年創業した一風堂はその名前の通り、それまでのラーメン業界に「一風」を吹き込み成長してきた。福岡という「裏」から始まったラーメン専門店は国内においては「表」となり、次の舞台である世界の「表」に向かっている。つまり、グローバル化が進めば進むほど、日本の裏側、地方、横丁路地裏、忘れ去られたところから逆襲が始まるということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:26Comments(0)新市場創造