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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2008年10月01日

ねじれ現象

ヒット商品応援団日記No304(毎週2回更新)  2008.10.1.

米国の経済安定化法案が下院議会で否決された。共和党から造反議員が出たことによるもので、選挙を意識しての造反であると報じられた。どの国も同じようなねじれ現象が起きているなと誰もが思ったことだろう。この「ねじれ」によって、金融安定化は長引くと判断され、株価は大きく下げた。多くの金融専門家が指摘しているように、今回の金融危機、倒産や合併による救済、公的資金の投入といった危機対策の結論から見えてくることは、証券会社(投資銀行)を消滅させるか、銀行へと再編させるか、この2つの方法で収束させるということだ。

米国共和党の反対票を投じた議員には、ウオール街の破綻は市場原理に基づいた結果であり、自己責任において倒産すればよいとの有権者からの強い要請があったという。今回否決された法案には当事者である金融各社の経営者の責任追及が盛り込まれず、有権者はより強く反発したと報じられた。1990年代半ば以降、強いアメリカ=強いドルを目指し、IT技術を駆使した新しい金融商品を次々と開発し、お金を米国へと集めた。しかし、米国において更に極端な格差社会を産み出していた。そんな市場原理主義者に対し、自己責任を全うさせるべきだとの声が、共和党議員に安定化法案の反対票を投じさせた。上院で修正され可決されるのではとの推測があるが、これもまた一つの「ねじれ」であろう。

日本の政治もそうであるが、この「ねじれ」によって従来「見えなかったもの」が見えてくる。サブプライムローン問題に端を発した金融システム、格付けを含め信用力が落ちると資金調達コストが上がり、最悪は資金繰りに困り破綻するという、投資銀行というビジネスモデルの弱点・問題点が明らかになった訳だ。更に、レバレッジという手法はマイナス・負においても同様のテコとなり、急速に悪化・破綻させるということも明確になった。まさにハイリスク・ローリターン、いやノーリターンである。日本においても不動産投資は昨年の夏をピークに下がり続け、今年に入り明確にその答えが出てきた。その代表例が8月に倒産したアーバンコーポレーションであり、ゼファーであろう。

今、米国発の金融危機によって原油価格が下落している。行き場を失い浮遊する投資資金がいつ商品市場へと戻ってくるか分からないが、石油エネルギーを始めとした資源価格の高騰によって「見えないグローバル経済」が見えてきた。投資マネーが「資源」に集中することによって、従来の富の認識を根本から変えた。勿論、中国をはじめとした「成長」が資源価格を後押ししているのだが、資源大国というキーワードのように、富の概念を変えた。この延長線上の日本では、風上である製造業においてはインフレ、風下の流通においてはデフレという情況、ねじれが現実問題となっている。

今週の週刊ダイヤモンドの特集は「倒産危険度ランキング」である。週刊東洋経済もエコノミストもほぼ同様の特集テーマである。そういえば、1990年代後半、山一証券に端を発した日本の金融危機でも同じような特集テーマであったことを思い出した。日本の経済誌も売らんがためのテーマ設定であるとはわかっているが、今回の金融危機は単なる金融という狭い世界の話しではない、と私は思っている。もっと根本のところで、「何か」が変わろうとしていると感じる。
つまり、「ねじれ」が起きるのは、旧来の価値観(パラダイム)が変わり始めたということだ。「ねじれ」は、一見混乱、混沌の様相を見せるが、そうではない。混乱の中に、次への新しい芽が至る所に出始めているということだ。カオスの中に産まれる芽、それは玉石混淆、木になり得るか、花を咲かせるか、誰もわからない。しかし、「ねじれ」こそ、次代を創っていくはじまりだと思う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造