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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。
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2007年06月06日

セルフ式         

ヒット商品応援団日記No173(毎週2回更新)  2007.6.6.

5〜6年前に歯ブラシやお箸など日常使う商品を自分のお気に入り商品とした「マイブーム」が起きた。以降、マイ○○、マイ××といった具合に商品が広がって来た。今、こうしたお気に入りとは少し異なるセルフ式が注目されている。最近の注目商品が日本実業出版社から3月中旬に発売された「聴診器ブック」だ。本を買うと聴診器がついてくるという面白さもあって既に4万部売れていると言う。この聴診器は医者や看護士が使っているものと同じで価格も2415円と買いやすいものとなっている。従来、プロ、専門家だけが使用していた世界に、受け手側が自ら使う商品化が進んでいる。

勿論、以前から料理道具はプロ仕様になり、楽器やカメラなどもプロ仕様であった。今、家庭菜園がブームとなっているが、こうした菜園作業もプロ農家と同じように土壌改良といったことも起きてくると思う。あるいはプロによる狭い分野の商品、調香師やお茶のブレンドといった世界までセルフ式が流行るかもしれない。既に、ファッションにおいても「手作り」が静かなブームになっていたり、ログハウスなんかも設計から実際の建築まで手作りログハウスが出て来ている。こうしたセルフ式には単なるお気に入りを超えた、知的興味によるところのものが多く見られる。ある意味、豊かさはこうした「知的興味心」を満足させる世界の商品化へと向かっている。

従来、こうしたプロ志向、専門家志向は資格というキャリアアップや就職のためであったが、知的興味を満足させるものへと変わって来ている。自分で行うという合理性、コストパフォーマンス性、自分仕様といったこともあるが、それ以上に知的興味を満足させる商品と言えよう。いや、逆に従来の発想とは正反対のところにあるアイディアである。聴診器を売るのではなく、本を売るために聴診器をつけたかのようなユニークさに惹かれるのだ。そして、医者はどのように聴診器を当て、心音を聞き、異常の有無を見出すのか、そうした興味が根底にあるということだ。「素人の生兵法は怪我のもと」という言葉があるが、プロがプロとして機能していない現実もあり、こと安心・安全については自衛の意味を踏まえたセルフ式が増加していくであろう。いわゆるセルフドクターである。

昨年のヒット商品である任天堂DSも知的興味を満足させるものであったが、脳科学といった未知への興味、あるいは生命の不思議さや未体験について新たな市場が生まれている。つまり、専門分野はプロに任せてといった発想を変えなければならないということだ。そのキーワードは「未知への体験」と思う。昨年の秋、東京豊洲にオープンしたららぽ〜とにキッザニアが出店し、行列ができた。キッザニアの対象は子供で「社会体験」「職業体験」であったが、大人の「未知なる体験」市場もまた生まれて来ているということだ。セルフ式、それは「大学習時代」におけるキーワードであると思う。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:36Comments(0)新市場創造